採用戦略の事例を特徴別に紹介!採用戦略策定のポイントとは。

「自社の採用戦略をつくっていくにあたり、他社の採用戦略の事例を知って役立てたい。」このような想いをおもちの方が多いのではないでしょうか。この記事では、採用戦略の考え方に加えて、注目すべき採用戦略事例を特徴別にご紹介します。また、採用戦略策定時に役立つフレームワークまで解説します。事例を活用しながら、より良い採用戦略をつくって採用を成功させられるように進めていきましょう。
そもそも採用戦略とは
採用戦略とは、自社の経営戦略の中の「人材」課題を解決するために、求める人材をどのように設定してどのように採用するのかの戦略のことです。ここでは、採用戦略の考え方の基本を解説します。
採用戦略の考え方
採用戦略とは、事業計画を遂行するために採用活動のあるべき姿を設定し、必要な人材を確実に採用することを目的として行うことです。ここでのポイントは、採用戦略のあるべき姿について、経営層だけではなく現場とも合意形成をしていくことです。むしろ現場主導で採用戦略・計画を立てていくことが重要であり、全社をあげて採用戦略策定にコミットしていくことが、採用成功のポイントです。
人事戦略との一貫性が重要
採用戦略は、人事戦略と一貫性をもたせることがポイントです。例えば、人事戦略として短期的に成果を上げた社員を評価し、報酬を上げていくような施策を設定しよう組織づくりを進めているとします。にもかかわらず、即戦力人材ではなく、「未経験だけれども成長は期待できる」という人材をターゲットに採用戦略をつくるというのは、人事戦略と一貫性があるとはいえないでしょう。長期的な成長を期待する人材を採用していくのであれば、成長プロセスを評価する人事制度にしたり、育成プログラムを重視した人事戦略をつくっていかなければなりません。逆に、育成・研修に投資をしていく人事戦略をつくっていく意思決定をしたにもかかわらず、中途の即戦力しか採用しないというのも、一貫性が欠如している状態です。
このように、採用戦略は人事戦略との一貫性を意識して考えていくことが重要です。
採用戦略の事例
続いて、採用戦略の事例をご紹介します。特徴に分けてご紹介しますので、自社に合いそうな事例を参考にしてみてください。
独特で面白い採用戦略の事例
ここでは、独特で面白い採用戦略の事例を2社ご紹介します。
面白法人カヤック
面白法人カヤックは、webサイトやアプリといったデジタルコンテンツを制作する、鎌倉発の企業です。ユニークな採用を行っていることで注目されていて、以下のような独特な採用を実践しています。
- いちゲー採用
- エゴサーチ採用
- ワンクリック採用
- エイプリル採用
ゲームにはまっている人に対して、そこに捧げた時間と情熱を評価する採用手法。ゲームの中で必要な発想力や問題解決力が、ビジネスでも活きると定義しての取り組み。
「Web検索すると自分が一番上にくるワード」を入力することがエントリー条件の採用手法。一般的な職務経歴書などの提出は一切不要で、応募されたワードを採用担当が検索して、その人の活動履歴をチェックして選考。エゴサーチ(検索)の結果がその人のいままでの活動履歴で、 その人のことを判断できる材料であると定義して実践している手法。
「Web上の活動を見るだけで、選考します。」とうたい、エントリーシート提出の必要がない「ワンクリック」で応募完了の採用。ディレクターはFacebook、エンジニアはGithub、デザイナーはFlickrの情報で選考され、Web上の過去の活動履歴で評価する採用手法。
4月1日限定で、なんと経歴詐称OKの募集。履歴書画像にウソの名前と自己PRを書いて、ハッシュタグ「#経歴詐称でエントリー」をつけてツイートするだけ。面白い嘘をつける人を募集しますと、クリエイター集団ならではの採用手法。
どれも、「面白く働けることが自社の価値」と置ききっているカヤックだからこその事例です。
エイチーム
エイチームは、ゲームコンテンツやECなどの企画・開発・運営を行う、名古屋の総合IT企業です。特徴的なのは、「わくわく、本気でいこう。」という採用のキャッチコピーで、採用サイト内にもわくわくする仕掛けが多数あります。特に、「INDOOR VIEW」というオフィスツアーをオンラインで体験できる仕組みが斬新で、オフィスで働くイメージをもちやすく、文字通りわくわくする仕掛けになっています。採用ページを見に来た求職者の興味を引くという点では、面白い取り組みをしている企業です。
エンジニア採用戦略の事例
続いて、エンジニアの採用戦略の事例を2社ご紹介します。
サイバーエージェント
サイバーエージェントは、アメーバブログやAbemaTVなどのサービスを提供するインターネット広告代理店の代表企業です。サイバーエージェントのエンジニア採用では、GitHubを活用して、書類選考の代わりにGitHubのレポジトリが審査対象となり、自社のエンジニアに高く評価された人が通過できる仕組みになっています。
オプト
オプトは、インターネット広告代理サービス、デジタルマーケティングサービスを提供する企業です。元々、エンジニア・テックのイメージよりは営業色が強い企業であったため、エンジニア採用のためにまずはテックイメージの浸透を図るためにイベントやブログでの情報発信からスタートしました。さらに、選考フローの改善も実施し、予定があうエンジニアには積極的に面接にはいってもらう「n人面談」を実施し、働くイメージを高めることで内定承諾率を大幅に向上していきました。結果、7人で始めたエンジニア組織が1年で50人に到達した事例です。
アルバイト採用戦略の事例
次に、アルバイトの採用戦略の事例を2社ご紹介します。
レストランツファクトリー
レストランツファクトリーは、「日本のファンをつくる」ことをミッションに、飲食事業を国内外で展開しています。ここで紹介するのは、リファラル採用を有効活用する採用戦略の事例です。人手不足で現場が苦しいことに加え、採用できたとしても採用費がかさみ、結果従業員に給与として還元できない状態でした。そこで、現場の店長クラスに、人事が採用にどれくらいのコストをかけているのか、その結果給与に還元できていないことを伝え、リファラル採用の効果を説明して導入しました。導入の目的をきちんと理解してもらったことで、社員紹介が加速し、リファラルでの採用が激増した事例です。
モスストアカンパニー
モスストアカンパニーは、モスバーガーの運営を行っている企業です。レストランツファクトリーと同様に、リファラル採用にてアルバイトを採用する戦略を進めました。「リファモス」と名付け、本社からのニュースリリースや、店長向け研修時にもアナウンスやチラシ配布、アプリの促進まで実施して浸透させていきました。結果、5ヶ月で70名もの採用できて退職者が激減するなど、大きな成果を残した事例です。
リファラル採用戦略の事例
ここでは、リファラル採用の採用戦略の事例を2社ご紹介します。
メルカリ
リファラル採用といえばメルカリと言われるほど、リファラル採用が浸透している企業で、CtoCのフリマアプリを展開しています。メルカリは、「10人採用するなら10人のエントリーで、良い世界をつくる」ことを目指した採用設計をしています。メルカリのリファラル採用戦略のポイントは、バリューの浸透です。自社がどういうバリューで事業をしていて、どんな人材が活躍するかを社員がわかっているからこそ、リファラル採用が機能しています。
リファラル採用が機能する大前提として、社員のエンゲージメントが高いということがポイントです。そこでメルカリは、採用にコストをかけるのではなく既存の社員への人材投資をするという経営戦略の元、福利厚生を充実させてエンゲージメント向上を図り、生産性向上及び離職率の低下を実現させています。また、MeetupやLinkedIn、Instagramや採用会食など、求職者との接点を多くもっていることも特徴の1つです。
エウレカ
エウレカは、恋愛・婚活マッチングサービスの「pairs」を運営する企業で、リファラル採用比率が一時8割を超えるほどの成果を出していました。「全員が採用担当」と位置づけ、目標を設定して数字を徹底的に追う形で進めました。紹介数を競うようにチーム制を導入し、目標達成意欲が強い自社の特徴をうまく利用してモチベーションを維持していきました。エンジニア採用のブランディングとしては、tech blogで技術を発信する戦略をとり、KPIとして「はてブ数」を置くなど、成果を見える化して取り組んだ事例です。
SNS採用戦略の事例
最後に、SNS採用戦略の事例を2社ご紹介します。
スターバックスコーヒージャパン
スターバックスコーヒージャパンは、文字通りスターバックスを運営している企業で、SNSを活用したソーシャルリクルーティングを有効活用している企業です。SNSを活用した採用では、自社のことを積極的に発信し、転職市場にはいない人材にリーチできることが特徴です。スターバックスジャパンは、SNS採用の特徴を特に活かせている企業で、TwitterやFacebookアカウントを開設して、募集中の職種で働く社員についての詳細な情報を発信して採用に繋げています。SNSを使って、自社のファンを創っている代表的な事例です。
日本オラクル
日本オラクルは、情報システム構築のためのソフトウェア製品やコンサルティングを提供している企業で、Twitterを活用したSNS採用に力を入れています。Twitterで自社の採用情報やイベント情報をつぶやくことはもちろん、書類の書き方や面接対策までつぶやくことで、求職者の興味関心をひいていることが特徴的な事例です。
採用戦略を策定するポイントと手法
ここからは、採用戦略を策定する際のポイントと手法について解説します。採用活動をしていくにあたってのポイントをきちんと理解して、採用成功に繋げていきましょう。
採用戦略策定のポイント
採用戦略策定をする場合には、大きく6つのポイントがあります。1つずつ確認していきましょう。
あるべき企業の状態を設定する
採用戦略策定の際に最も重要なのが、あるべき企業の状態を明確に設定することです。そもそも採用が必要ということは、あるべき企業の状態と現状との間にGAPがあり、そのGAPを人で解決するということのはずです。一方で、採用時代が目的・目標になってしまい、なぜ採用するのか、採用することによってどうなりたいのかが抜けてしまう採用戦略は、よくある失敗事例です。
こうしたことから、まずは企業のあるべき状態をきちんと設定しましょう。
なぜ採用が必要なのかを明確にする
企業のあるべき状態が設定できたら、その状態になるために「なぜ採用が必要なのか」を明確にすることがポイントです。上述のように、採用が目的になってしまっている組織は、本来不要な採用をしてしまう可能性があります。ありたい姿のために、本当に採用が必要なのか、採用することが最も目的に近づける手段なのかを明確にしていきましょう。実は、「社員の生産性向上のための取り組み」「業務効率化ツールを入れる」等の施策の方が、採用よりも適した取り組みかもしれません。
現場を巻き込んで採用計画に落とし込む
採用が本当に必要だと判断できれば、現場を巻き込んだ採用計画に落とし込むことがポイントです。採用戦略を作っていく際には、経営陣の意向をただトップダウンで落とすだけではなく、現場がどう感じていて現場がどうしたいのかという点に基づき、現場を巻き込める戦略にすべきです。現場主導で動ける採用戦略であるか、現場がきちんと採用にコミットできる戦略であるかを慎重に設計する必要があります。
自社の魅力と求める人材を明確にする
続いて、自社の魅力と求める人材の明確化も大きなポイントです。自社の魅力をきちんと理解し、どんな人材を採用すべきかを設定しないと、最適な採用戦略は立てられません。自社のアピールすべきポイントがわかり、どんな人材を採用すべきかがわかってこそ、どんな採用戦略で進めれば良いのかが明確になりますので、明確に設定しましょう。
採用目標と採用手法を設定する
ここからは、具体的な採用目標と採用手法を設定していくフェーズです。定めてきた採用戦略を、具体的な行動に落とし込んでいきます。採用戦略から考えて、どこの部署のどんな職種を何名採用するのかを設定することが重要です。その採用目標に対して、どの手法で採用をするのがベストなのか、もしくは組み合わせていくのかを設定します。この職種で◯名ならば、求人サイトとリファラル採用で進めよう、この職種で◯名ならば、人材紹介で進めようなどと設定していきましょう。
内定・入社後のフォローアップ体制を構築する
最後に、内定まで出して終わりではなく、内定後・入社後のフォローアップ体制まで設計しておくことがポイントです。内定を出すことが目的ではなく、企業としてのあるべき姿を実現するために、人を採用して活躍してもらうことが目的です。そのため、内定後にどうやってフォローし、入社後にどうやって活躍してもらうのか、フォロー体制をきちんと構築しておきましょう。
採用戦略策定に便利なフレームワーク
採用戦略を策定し、採用計画に落とし込んでいく際には、フレームワークを活用すると便利です。採用戦略策定時にシートとして活用できる代表的なフレームワークを、3つご紹介します。
3C分析
1つ目は、最もメジャーな分析手法である3C分析です。3Cとは、
- 市場・顧客(Customer)
- 競合(Competitor)
- 自社(Company)
の3つを指します。3Cを分析することで、自社の成功要因を導き出し、成長戦略に活かしていきます。採用においては、「顧客=候補者」、「競合=候補者が興味を持ちそうな自社以外の企業や業種」、「自社=自社の魅力や弱み」を定義して考えていくと良いでしょう。
まず、「顧客=候補者」については、「自社に本当に必要な人はどこでどんな仕事をしていて、どんな能力があるのか」「その人はどのようなタイプの人間で、どんな志向性か」「どのくらいの人数がどの部署に必要なのか」などを深堀りして分析していきます。
次に、「競合=候補者が興味を持ちそうな自社以外の企業や業種」については、「競合の業種や職種はどんなところか」、「どんな社風で、どんな人物を採用しているのか」、「どんな強みをもっている企業なのか」などを過去の採用データ等を参考に分析します。最後に、「自社」について、「どんな強みがあるのか」、「候補者にアピールできるポイントはどこか」、「入社することのメリデメ」を分析します。
これら3Cの分析結果から、どのような戦略で採用を進めていくのが、3C分析を用いた採用戦略策定です。
4C分析
4C分析は、3C分析の「C」とは全く異なり、
- 顧客にとっての価値(Customer Value)
- 顧客の負担:(Customer Cost)
- 顧客の利便性:(Convenience)
- 顧客との対話:(Communication)
という4つのCの視点で分析を行います。4C分析の特徴は、顧客側の視点でサービスや商品を分析することです。つまり、顧客(採用の場合は求職者)にとって自社のどこがメリットで、どこがデメリットになるのかを分析すためのフレームワークです。価値と負担はメリデメと考えればわかりやすいと思いますが、利便性と対話がイメージしづらいかと思いますので解説します。
求職者にとっての利便性は、たとえば、合同説明会や採用説明会等で説明を聞ける機会が多くあったり、面接や面談の日程調整のしやすさや、オンライン面談で都合をつけやすかったりすることです。求職者との対話は、採用ページから気軽に採用担当とコミュニケーションが取れたり、説明会等のリアルな接点の場で、社員や経営陣と対話をする場があったりすることです。
以上の4Cを踏まえて、自分が求職者だったらどうあってほしいかを考えると、より良い採用戦略に繋がります。
SWOT分析
SWOT分析は、
- 強み(strength)
- 弱み(weakness)
- 機会(opportunity)
- 脅威(threat)
の4つを軸にした4象限を設定する分析手法です。強みと弱みは「自社」について、機会と驚異は「外部環境」についての軸であることが特徴で、自社と外部環境の対応を分析できる手法です。採用を成功させるために、SWOT分析を用いて「自社の強みが何で、どう活かすか」「自社の弱みが何で、どのように克服するのか」を考えます。更に、他社の状況や景気、政治動向などの自社ではコントロールできない「市場の機会」と「脅威」を分析し、洗い出した強みと弱みに対してどう活かすのか、どう脅威を排除するかを考えます。
SWOT分析から導き出した自社の状況を、求人票に落とし込んだり面接でプレしたりして、求職者に正確な情報を与えつつ動機づけすることが可能になります。
セミナーで学ぶことも重要
採用戦略は、セミナーで学ぶことも重要です。自社内だけで考えるのではなく、成功事例や失敗事例を他社から学べるのが特徴です。リファラル採用のTipsを学べたり、効果測定の方法まで学べたりするので便利です。
HERPやパーソルキャリアのようにセミナーを実施している企業は多数ありますので、採用戦略で悩んだ際にはセミナーに参加してみましょう。HRプロや日本の人事部でもセミナー情報を取得できますので、チェックしてみましょう。
採用戦略事例を参考に自社に最適な戦略策定を進めましょう
特徴別に、様々な企業の採用戦略実践事例をご紹介しました。採用戦略は、企業と採用のありたい姿を設定したうえで、経営陣と現場が一丸となって策定すべきものです。自社とターゲットになる求職者をフレームワークを用いて分析して、適切な採用戦略をつくっていくことも重要です。自社の置かれる状況と、ターゲットとなる求職者にとって、どのような採用戦略でどのような手法で採用するのがベストなのか、きちんと設計していきましょう。